■■■妄想検証1 たばこ■■■

■小説にはキャラクタを引き出すための小道具がつきものです。この項では、そんな『アミューズメント・パーティ』に登場した小道具などを検証してみたいと思います。

■題して「妄想検証」。これは楽光一のオフィシャル設定ではなく、他故壁氏が小説の描写と当時(1988年)の時代背景を基に「妄想」で作り出した「アンオフィシャルな見解」の羅列です。

■第1回は「たばこ」。小道具としては常套手段の存在ですが、『アミューズメント・パーティ』のキャラクタたちはいったいどんなたばこを吸っていたのか? の謎に迫ります。

 

ケース1 雪崩山勇次

■いつもたばこをくわえている……そんなイメージの彼ですが、実は小説内では最初のころは喫煙シーンがありません。

 雪崩山は取り出したタバコに火をつけながら、ゆっくりと、諭すように言った。
「彼女の能力はアンプリファイア……超能力増幅能力だ。彼女自体には何の能力もないのと変わらん。彼女は麻都の時も、翼曽の時も、お前の能力を増幅したに過ぎん。ヤツらを追っ払ったのは、お前なんだよ」

■じつは雪崩山は第13章まで、飯島の前でたばこを吸っていません。高校時代はへヴィスモーカだったのに、喫茶店でも学生ホールでも中華料理店でも吸っていません。食事の後にたばこを吸わないへヴィスモーカなんて聞いたことがありません。

■ただ、ライダージャケットに身を包み、つねにサングラスをかけてクールを装う彼のことですから、たばこもアメリカンなことでしょう。類推するに、マルボロあたりではないでしょうか。

 

ケース2 小川恭一

■初登場時からたばこを吸っている彼は、雪崩山以上にたばこのイメージの強い人物です。

 飯島のこの質問に、小川は青い空を眺めながらゆっくりと答えた。
「……君の考えているほど、E研は悪いサークルじゃない。少しばかり学校寄りなのは認めるがね、もう昔みたいに総長のボディーガードなんかはやってないし、補助金も普通のサークルと一緒だよ。ただね、僕がE研に入った理由はね……」
 タバコをくわえ、ライターをつける。白い煙が青い空に染みていく。飯島はポカリの缶を膝に置いて待った。

■紳士然とした彼は「綺麗にたばこを吸う男」として描かれています。へヴィスモーカという負のイメージのない人物ですね。彼の銘柄はラッキーストライクです。第18章で瀬川がたばこをもらうシーンに名前がでてきます。

 小川の物言いに、再び瀬川は苛ついた。
「……小川、一本くれ」
「珍しいな」
「煙草でも吸わなきゃ、冷静になれん」
 小川はラッキーストライクの箱と使い込んだジッポを瀬川に投げた。

■あ、ネタバレですか?(笑)

 

ケース3 藻間隆

■藻間はふだん禁煙パイポをくわえていますが、セレファイスで加藤に念動発火でたばこに火をつけてもらっています。

 藻間はタバコをくわえながら言った。そしてさっきから割澤のとなりでしきりに何かを尋ねている加藤の方を向いて何かを要求した。加藤はその仕種に気づくと、左手を藻間の方に差し延べる。軽い摩擦音がして、藻間のタバコに火がついた。
「サンキュ」
 藻間の感謝の言葉に、加藤はどういたしましてと返す。その様子を見ていたマスターは、メンバーに向かって言った。
「加藤ちゃんがいると、うちのマッチが減らなくて助かるよ」
 軽い笑いが店内に響いた。

■第4章で加藤の念動発火能力がはじめて披露されたシーンですが、藻間はこれ以降、たばこどころか禁煙パイポも口にしなくなります。この段階で禁煙が成功したと見るべきでしょうか。よって、藻間のたばこの銘柄を特定するのは小説内からでは不可能です。

 

ケース4 超能力者

■『アミューズメント・パーティ』の世界では、超能力は年齢とともにその能力が失われ、また嗜好品でその能力が欠損・増幅することがあります。

■この設定は楽光一が愛する『七瀬ふたたび』(筒井康隆・著)からインスパイアされている設定です。

「ぼくは子供の頃から予知能力があった」青年は便所の横の壁に凭れ、ポケットから煙草を出した。「さいわいこの能力を誰にも気づかれないまま、こんなに背が伸びてしまったけど、予知がはずれたことはまだ一度もないんだよ」いささか自慢げにそううちあけ、自分が煙草を一本くわえてから、ふと気がついて七瀬にもさし出した。
 七瀬はかぶりを振った。「煙草を喫っちゃだめよ」
「どうして」
「能力が低下するわ」

■ 『七瀬ふたたび』(新潮文庫版)第1話「邂逅」34から35ページを引用させていただきました。って、「インスパイア」というよりは「持って来」では……(苦笑)。

■でもこのことって本編では語られてないなあ。『魔龍大秘境学園』ではちゃんと語られているのに。

「まあ待ちなさい。コーヒーは煎れ立ての香りが生命……香りを味わうこのひととき……あぁ幸せ」
 雪崩山三郎教授の研究によれば、超能力者がその能力を維持するためには、精神状態を高揚させる物質を好ましい精神状態で適量を摂取することが必要だという。酒ーー煙草ーーカフェイン。「健康を害することのない摂取」が原則ではあるが、物心ついた時から父の実験台だった雪崩山には、これらの刺激物はもはや常用のものであり、三度のメシより摂取量が多いこともしばしばだった。

 

■……しかし、思った以上に喫煙者少ないですね。当時の大学生ってみんな吸ってるかと思ったんですけどね。しかしそれ以上に彼らは呑む!(笑)

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