【こんなゲームをやった】

セガラリー・チャンピオンシップ

セガ・エンタープライゼス/セガサターン用ソフト/5800円

by江戸村沙樹

 

 「セガラリー・チャンピオンシップ」(以下「セガラリー」と略す)は鯣のようなソフトである。とにかく難しい。ゲームとは思えぬほどステアリング捌きが微妙でシビアだ。デモ画面はポリゴンがディザっててあんまりキレイじゃないが、いざ本番になるとその動きの良さには舌を巻く。なるほど、「ハードの限界に挑戦した完全移植」の名は伊達じゃない。やればやるほどアツくなる。悲しみの不完全移植ソフト「デイトナUSA」のカタキを、ついにセガは討つことに成功したのだ。
 このゲーム、特筆すべき点がある。実車が走る、実車を使える、ということにここまで興奮を覚えるとは思わなかった、ということだ。これはライバルであるナムコ「リッジレーサー・レヴォリューション」にはないフィーチャーである。
 「セガラリー」はトヨタとランチアのバックアップを受け、実在するラリーカーであるトヨタ・セリカとランチア・デルタをマイカーとして使用できる。セリカはともかくデルタは箱車で、デザイン的にもあまり美しくないマシンである。ラリーカーとしての魅力はあるが、では好きな車か、と言われると困る。
 ダート走行が難しい、カーブでのドリフトがゲーム的でなく実車に近いフィーリングで難しい、今までのレースものになかった「リアル・ラリーもの」になじめない、セリカもデルタも好きになれない――いくつかの要因が重なって、小生はアーケードでは「セガラリー」にあまり興味を持てないでいた。
 しかし、そういえばサターンに移植されたなぁ、動きもいいしそろそろ買わねばなぁ、しかしやってないソフトも多いし先に「闘神伝2」買わにゃ……などと躊躇していた矢先、飛び込んできたビッグ・ニュース。
 ――サターン版「セガラリー」では、ランチア・ストラトスが使える!
 そりゃあなた、これはもう買うしかないでしょう。現在の二十代後半から三十代前半の車好きならだれしもが読んでいるのバイブル的存在のスーパーカー漫画、「サーキットの狼」! その最大の決戦である流石島サーキットレースに参戦し、フェラーリ・ディノRSやポルシェ・カレラRSRを尻目に世界一のコーナリング性能を見せつけた、北海の龍あやつるアリタリア・カラーのスーパーラリーマシン!
 あの20年前の名車が今、ここに敢然と蘇るのだ。これが買わずにいられようか? ちなみにストラトスは隠しマシンなので、裏コマンドで出現させる(初級・中級・上級の各コースをものすごくはやく走ることでも手に入れることができるが、このゲームで上級を1位クリアすることなぞ小生にはとうてい不可能である)。キーはXYZYX、これを入力してからアーケードモードなりタイムアタックモードなりを選択すると、ああ憧れのストラトスの、あの楔形の雄姿が眼前に!
 いいぞセガ、その調子で実車シリーズだ! 次のパテントはロータスとポルシェから取れ! そして作るんだ、リアルポリゴンレースゲームの「サーキットの狼」を! コースは色々考えられるぞ。「首都高対決――ロータスの狼VSナチス党総帥」だろ、「公道グランプリ(こいつは長いから、スタートから霧の箱根昇り、雪の箱根下り、熱海湾岸道路の三ステージに分けてもいい)」だろ、「首都高決戦――真紅のポルシェ・ターボVSシュトコーの見死魔・Z432R」だろ、「筑波サーキットA級ライセンス戦」だろ、「東名高速箱根・大井松田間モンスターマシン戦」だろ、「流石島サーキット戦」だろ……うーん、わくわくするぜぇ(えっ、しないって? そりゃまた失礼いたしました)。
 BGMも「リッジレーサー」シリーズのヨーロピアン・レイヴサウンドに対して、アメリカン・イージーリスニングサウンドで迫る「セガラリー」。素晴らしすぎる。
 ああ、悪かったセガ。一年前の俺を許しておくれ。「バーチャファイター2」もちゃんと60分の1フレームで移植できたし、「セガラリー」は万全の出来である。セガの時代が来たのかもしれない。
 この意見が二ヶ月後、「鉄拳2」によって覆される可能性もあるが。

1996.02.03

 

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