たっくの大冒険

 

 とんとん。
 扉をノックする音。
 かちゃっ。
 扉をあける音。
 てくてくてく。
 誰かが入ってきた。
 扉の方を見る。
 そこにいたのは――。
 ピンクのテディベアだった。

 

第一章 1998.07.20 22:58


http://www.novelworld.ne.jp/~minakawa/chatroom/yukachat.cgi

*****楽光一さんが入室しました。*****
楽光一>こんばんわ>ALL
たか>こんばんわー楽さん
くつみ>こんぱんわ、楽さん
りょーさん>まいどー>楽さん
他故隊長>まいど>楽さん
楽光一>みんないるなぁ(笑)。
*****斎藤冬樹さんが入室しました。*****
斎藤冬樹>みなさんこんばんわ。お近くの斎藤冬樹でございます。
他故隊長>でもさ、それっておかしくない?>りょーさん
たか>考えすぎだよぉ>りょーさん
くつみ>こんぱんわ、冬樹さん
りょーさん>いや、そんなことはない。誰にでもあることだってば>隊長
楽光一>こんちわ>冬樹さん
りょーさん>たかさんは黙ってなさい。男と男の話なんだから(笑)。
たか>冬樹さん、こんばんわ。
他故隊長>まいど>冬樹さん
りょーさん>まいど>冬樹さん
楽光一>さいきんは忙しいですか>冬樹さん
くつみ>いやん(笑)>りょーさん
たか>ぶー>りょーさん
他故隊長>そうかなぁ。少なくとも小生にはないぞ(笑)
たか>そうそう隊長、ところで、レーザープリンタの件なんですけど。
くつみ>男の人は複雑なのですね。
くつみ>むぎゅ
斎藤冬樹>いや、ぼちぼちですよ。HPの更新がなかなか進まないですけど、あとはそれほどでも。>楽光一さん
りょーさん>そうかなぁ。
他故隊長>あ、あれね。どうしようか>たかさん
他故隊長>むぎゅってあーた(笑)>くつみさん
りょーさん>でも、判ってはくれますよね、隊長も。
たか>そう、複雑複雑>くつみさん
楽光一>そうですか。また冬樹さんの演奏が聴きたいなぁ。
くつみ>さて、いったん落ちますね。お風呂にいってきますので。
斎藤冬樹>そうですね。またコンサートがあったらお呼びしますよ>楽光一さん
くつみ>*****湯上がり食べごろになって戻ってきます*****
楽光一>(……他故、ちょっといい?)
他故隊長>小生にはないけど、男としては判るような気もするような気もする(笑)>りょーさん
たか>さよなら、くつみさん
りょーさん>さよなら、くつみさん
他故隊長>さいならー>くつみさん
他故隊長>(なに?>楽)
斎藤冬樹>また後でお会いしましょう>くつみさん
楽光一>ツーショットで待ってる>他故さん
楽光一>*****ちょっと落ちます*****
楽光一>*****さよならー>くつみさん*****
他故隊長>おいおい、強引だな。さいなら>くつみさん
他故隊長>*****聞こえます!*****

http://www.battlarts.ne.jp/~project-t.a.c/chat/twoshotchat.cgi

*****楽光一さんが入室しました*****
*****他故隊長さんが入室しました*****
*****これ以上の入室はできません*****
楽光一>しかし、なんちゅうメールをよこすんだお前は。
他故隊長>何だよ、やぶからぼうに。
楽光一>どっちがやぶからぼうだってんだ。だってそうだろ、相談なら相談らしく、もっと低姿勢で、もっと心をこめて書けよ。
他故隊長>お前と小生の仲だろう。いちばん判りやすく書いたつもりだが。
楽光一>……チャットでどのくらい俺の気持ちが伝わるか判らんが。
他故隊長>おいおい。それなら電話でもいいし、会ってでもいいよ。今夜おまえがこの時刻にいるとは思っていなかったんだ、だからメールにしたんだぞ。
楽光一>いるって。もう11時過ぎてんだぞ。いるに決まってるだろう。なに威張ってるんだ。
他故隊長>小生だってns
他故隊長>小生だってな、辛いんだよ。
楽光一>ばかたれ。なにが辛いだ。お前、土曜日に俺にしたことを忘れたのか?
他故隊長>他に相談できる相手もいないしさ。
他故隊長>忘れちゃいないよ。だから、恥を忍んでこうやってお願いしてるんじゃないか。
他故隊長>電話して、圭子ちゃんがでたら小生、めちゃめちゃ恥ずかしいしさ。
他故隊長>な、な、いいだろ。
他故隊長>……おいおい。返事しろよ。
他故隊長>まだいるんだろ?
他故隊長>写真だけでもいいよ。メルアド教えろとか言わないからさぁ。
他故隊長>……おーい。
他故隊長>……もしもーし。

 

第2章 1998.07.20 23:42

 

 モデムが電話回線を切ったことを確認すると、俺はひとつ大きなため息をついた。
 他故がそんなことになっていたことに、多少驚いたためだ。
 もう一度、彼からのメールを確認するために、メールソフト【ポストペット】を呼び出す。NetscapeNavigatorの下になっていたウインドウが前にやってきて、おもちゃの家みたいなカラフルな絵が出てくる。
 そこには、ピンクのテディベアがちょこちょこと歩き回っているのだ。
 メールソフト【ポストペット】。ちょっと説明が必要かもしれない。
 インターネットにおける電子メールは、いわゆるメールソフトというプログラムを使って送信/受信する。
 このポストペットは、そんな電子メールソフトの中でも異色中の異色ソフトだ。何せ、相手のメールを相手のペットがちょこちょこと持ってくるのだから。もちろん、自分の出したメールは自分のところのペットが相手まで持っていく。
 ポストペットの中には、ペットがいる。3Dレンダリングで処理された、コンピュータグラフィックのペットである。相当なデフォルメが成されていて、非常に可愛らしい。初期段階で、四ついるペットの中からひとつを選び出すのだ。
 ひとつはピンクのテディベア。
 ひとつは青い雑種猫。
 ひとつは緑の草ガメ。
 ひとつは白いミニウサギ。
 これらを選択して飼うことによって、ポストペットの世界は始まる。
 ペットたちは生き物だ。だから、食事を与えたり、洗ってあげたり、また撫でてあげたりして機嫌をみる必要がある。どんなペットでも可愛く育てたいものだ。
 俺のパソコンのデスクトップには、ピンクのテディベアがいる。名前は〈たっく〉。年齢は既に277日だ。配達したメールの数は138通。「判らないことが減りました」とコメントされている通り、ペットとしてもかなりキャリアを積んだことになる。
 たっくはいま、〈宝箱〉の前でだらだらしている。どうやら〈宝箱〉に固執してしまっているようだ。マウスカーソルをそーっとたっくの頭上に持っていき、一回クリックする。ぽくっ、という軽い音ともに、たっくの頭上に拳骨が降りそそぐ。青筋マークを立てたたっくが一瞬こっちを見るが、しかしすぐにふにふにと部屋の中を歩き出す。時にはしつけも必要だ。
 ペットたちはメールを相手のところに運んでいく途中で、色々なものを拾ってくる。その拾ってきたものを入れておくのが〈宝箱〉なのだ。たっくは最初のうちはかなり色々なものを拾ってきたが、いまはそれも厭きたのか、あまりものを拾ってこなくなった。
 そんなたっくの動きを目を細めて見ていると、背後に気配を感じた。別段珍しいことでもないので、振り返らずに誰何する。
「まだ起きていたのか……圭子」
「ちょっと眠れなくて……」
 寝ぼけまなこの妻が、ぼーっとした顔でモニタの中に映り込んでいる。大きな丸めがねの中の眼は細く、いまにも瞑ってしまいそうだ。
「いいよ。今日はもうインタネにも入らないから……ちょっと呑ろうか?」
 俺はパソコンラックの右隣にあるちいさな冷蔵庫から、トニックウォーターと氷を取り出した。圭子はいつの間にか、GILBEY'Sのドライジンの瓶を持っていた。
 結婚して五年、子供のいない俺は、たっくに本物の娘を見るような気持ちになっているのかもしれない。
 圭子もそんな俺の気持ちをうすうす勘づいているのか、極力俺のパソコンには近づかないようにしているようだ。たっくがちょこちょこ動いているのを見たら、辛くなるのは圭子の方だ。
 ジントニックを飲み、圭子の肩を抱き寄せながら、俺はぼんやりと他故の出してきたメールのことを考えていた。
 俺と他故とは、大学のときに出会った。以来、腐れ縁ということで、ずっと付き合いがある。
 同じ大学の同じ学部の同じ学科の、同じサークルに所属していた俺たちは、当時から既に「魂の双子」と呼ばれるくらいにくっついて行動していた。ただ、嗜好やセンスは別物だったから、双子と言っても似ていたわけじゃない。
 後で偶然知ったことだったが、俺と他故は、生年月日がいっしょだった。月日が一緒な例はありえるだろうが、生年までが一致するのは珍しいことだ。実はこれに、親父の誕生日まで一緒という落ちがつくのだが、残念ながらふたりの親父の生年は異なる。
 既に大学を卒業して八年が経過していた。その間、他故は仕事の関係で四国に転勤し、一時期俺との付き合いも断ち切れてしまったことがある。
 その関係がふたたび始まったきっかけは、インターネットだった。
 俺も機械ものは好きな性分だったが、ずっとワープロばかりを使っていた。パソコンに移行することはあまり考えていなかったのだ。
 だが、時代の流れは非情だ。すでにワープロでは限界が見えてきていた。しかも、仕事柄、打ち込んだものを電子データとして入稿する必要が出てきていた。最初はフロッピィ入稿で済んだものが、次第にパソコン通信で送るようになっていく。
 時代の流れに負けた俺は、四年前、ついにパソコンを導入した。編集者の薦めに従い、その一年後にはインターネットへのアクセスも行った。インターネットはまったくの素人だっただけに、そのときのカルチャーショックは今もって忘れられない。
 そんな俺が、今では食いぶちの何割かをインターネットのオンライン小説で得ているのだから、世の中というものは判らないものだ。
 そして、そのオンライン小説を掲載するホームページで、俺は他故と再会することになったのだ。
 他故はそこのホームページにリンクする形で自分のホームページを作り、また作家別の掲示板やチャットに現れていた。
 俺がオンライン小説を載せているそのホームページは、とあるプロバイダが実験的に経営するサイトの「小説家コーナー」とでも呼ぶべき場所だった。人気のある作家のファンクラブが集中リンクする場所で、大学時代にお世話になった小説家・皆川ゆか先生のファンクラブもここにあった。
 皆川先生のファンは、既にインタネ上に無数にいた。その彼ら彼女らが自主的に活動しているのがこのホームページであり、並み居る大作家を尻目に盛況を誇っていた。専用のチャットには、いつも誰かしらがいた。
 俺はいつしか、そのチャットや掲示板に顔を出すようになっていた。懐かしい、という気持ちと、大学当時とそのままの熱気をもう一度味わいたいという気持ちから……。
 その掲示板上で、他故と再会したのだ。
 もともと他故は皆川先生のもとでワープロオペレータをしていた男で、そういう意味でも「最古参の皆川ファン」であることは間違いなかった。
 彼は精力的だった。徳島という慣れない土地での独り暮らしの閉塞感も手伝ったのだろう、かなりのパワーをインタネ上に撒き散らしていた。
 そして昨年、彼は東京に帰ってきた。帰任ということだったが、実質は地方から追い出されたのだ。あのインタネ上でのパワーは、精神を癒すための逃避行動だったのだろう。土地の水が合わないことは、よくあることだ。
 東京に帰ってきて最初の月に、彼のアパートに行って呑んだ。すこし太ってはいたが、変らぬ彼の姿にほっとしたものだ。
 その後の彼は堰を切ったかのように活動し始めた。その最たるものが、彼の主催する「カラオケ歌い隊」だろう。これは彼が、皆川ゆかファンクラブの掲示板上で突発的に始めた自主オフラインミーティング――通信上(オンライン)だけでなく、じっさいに相手と会って話をする(オフライン)会――で、簡単に言えば好きな歌をカラオケで歌うというただそれだけのものなのだが、掲示板で語りかけると十人や二十人は簡単に集まってしまうほどの会になり、その後オフ会が大増加するきっかけともなった。
 俺も何度か、その会には参加させてもらっている。歌は好きだがそんなにたくさんのレパートリーを知っているわけじゃない。でも、他故の歌は聴いているだけでも楽しいし、参加者も何度か来ることによって、いろいろな楽しみ方を覚えたようだった。
 東京だけでなく、京都、岐阜、静岡、長野と地方でも精力的に会を行い、その輪は確実に拡がっていった。
 俺と他故の間も、四年間のブランクを埋めて、また「魂の双子」に戻ろうとしていた。

 

第3章 1998.07.21 01:57

 

mailto:takokabeuji@battlarts.ne.jp

 きらりーん。
 メールが届きました。
 こんこん。
 ちゃっ。
 たっくが遊びに来ました。
 ぽくっ。 
 てくてく。
 ちゃっ。
 たっくが帰ります。
 ひよーん。

 

第4章 1998.07.21 18:51

 

 俺は疲れていた。
 こんなくだらないことにつき合わされていることにも腹を立てていたが、何より他故が大遅刻をやらかしていることに腹を立てていた。
 腹を立てすぎて、疲れてしまったのだ。
 もうすぐ七時になる。
 約束の時刻は六時だ。
 その間、連絡は何一つない。
 彼の携帯はいつまで経っても呼び出し音のままだし、俺の携帯も着信した気配がない。
 メールを出したのが昨日の深夜、返事が来たのが今朝の七時。時刻と場所を指定したのは他故の方だった。
 ここは七時に閉まる喫茶店なのだ。他故もそれは承知のはずなのだ。
 たっくが帰ってきて、持ってきた〈ひみつ日記〉には、こんなことが書かれていた。


7月21にち
今日他故壁氏のところへいった。
たにむちとあそんだ。
一回なぐられた。
タイプ?
----------
たっく


 彼のペットは俺と同じピンクのテディベアだが、名前をたにむちと言う。何でそんな妙な名前にしたのだろうか。そういえば、由来を訊いたことはなかった。
 テーブルの上に視線を落とす。薄暗い店内に、怪しげに光るバックライト液晶。いつも持ち歩いているミニノートパソコン――Libretto for DoCoMoのバッテリは、あと70パーセントあった。
――ちょっと見てみるか。
 しかたなく、俺はPHSを取り出して繋ぎ始める。メールを読むためだ。自宅のマシンにしかポストペットが入っていないから、本当はメールは自宅で読みたいのだ。来るメールの3割ほどがペットなので、出来ればペットはちゃんと受け取ってあげたい。でも、今日は仕方がない。緊急事態なのだ。
 PHSがアクセスポイントを探している間、また俺は鬱陶しい出来事を反芻し始めていた。
 他故がおかしくなったのは、先週の土曜日に行われた「カラオケ歌い隊」の席でだった。
 久しぶりに東京で行われたオフ会は、二十人を超える大盛況の会で、他故も総ての人間をコントロールするのは無理だったようだ。
 それはネットで知り合った人だけでなく、その友人や知人なども含まれており、一度のおざなりな自己紹介ではまったく人の顔と名前を一致させることは不可能だった。
 カラオケボックスの中も鮨詰めの状態で、となりの人と触れ合わずに座るなど思いもつかない状態だ。そんなところに若い男と女が詰まって、何をするかと言えばカラオケ。よく判らない集団である。
 その時、俺の隣に座った女の子がすこぶる美人で、その落ち着いた雰囲気から俺はてっきり二十四〜五の社会人だとばかり思っていたのだが、話をしてみたら実は十九歳の女子大学生であることが判り、少々驚いたことを覚えている。
 彼女はインターネットには自宅から入れるがこの会のことは知らず、友人に連れられてきたのだという。だから申し訳ないが、皆川ゆかという作家や、小生も知らないのだという。ただ、同人誌関連の活動はしていて、コミックマーケットにも出向いたことがあるという。
 そこで俺は少々驚いたのが、彼女の口から圭子の描いていた同人団体の名前が出たことだった。どうやら圭子が漫画を同人誌に発表していた頃、彼女は雑誌か何かでその存在を知って手紙を書き、実際に原稿を描いたことがあるらしい。彼女は、圭子の名前も覚えていた。
 しかし、それにしては年齢が合わない……と思ったが、圭子が同人活動をやめて六年は経たないのだ。最近の中学生なら、判らないこともない。
 後でうちに帰って圭子に訊いてみたところ、彼女の名前は覚えていなかったが、ペンネームと絵柄を言ったら膝を叩いていた。中学生の女の子が描くにはあまりに上手い絵だったから、シャクだったので目次のカットとしてちっちゃく使ったことを思い出したという。
 妻の名前を出された俺は、オフ会用の名刺に妻の名前を一緒に書いて、彼女に渡した。必要があったら、妻あてにメールを書いて欲しいと思ったからだ。名刺に載っているアドレスそのものは自分のものだが、内容は読まなければいい。
 その時の俺は、購ったばかりのメガピクセルデジタルカメラ・COOLPIX900を持っていて、何か撮りたい欲求に溢れていた。気づいたら、俺は彼女を撮っていた。
 その光景を、他故は見ていたのだ。
 二次会の席で妙な酔い方をした他故は、会が終わった店の前でいきなり俺に絡みはじめた。
「いいじゃんか、画像データくれよ!」
 髪の長い、色白の、黙っているとお嬢様、喋り出したら下町のマドンナ……酔った席で、他故はそんな呪文のような言葉を呟いていた。瞬間的に誰のことか理解したが、そんなことは被写体の許可を取ってからにしてくれ、と俺はめんどくさげに言った。酔ったときの彼が始末に終えない人間であることを、俺は十年前からよく知っている。
「何をぉ!」
 彼の右手が、けっして鋭くない速度で俺の顔めがけて移動してくる。本当は嫌なのだが、反射的に俺の身体が動いてしまう。
 俺は体を代えて拳を躱すと、左手で手首を取り、同時に他故の腕をぐるりと彼の背後に回し、右脇でその腕を挟み込んだ。他故の腕は勢いよく回って、これ以上回らない位置に来る。そのまま俺は腰を落とし、腕を極めた。
「はい、悪ふざけはここまで。反省しなさい」
 他の参加者に気づかれないうちに技を解き、俺は他故に言った。他故は右肩を押さえてしょげ返る。
 何かに焦っている……俺はその時、そう思った。他故は焦っている。でも、何に?
 メールは……なかった。
 暗い店内を、一瞬の雷光が照らす。
 傘の用意をしていなかった俺は、汚く舌打ちした。

 

第5章 1998.07.22 10:58

 

 圭子の創作記録から、彼女の名前が石原織香であることが判った。東京に住んでいる子で、住所も引越していなければこのままだろう。
 だが、判ったからと言って、どうしろというのか?
 他故にこのことを教えてやる義理はない。
 あの日、結局他故は来なかった。夏風邪を引いていたとか何とか言い訳めいたメールがあとで来ていたが、そんなことはすぐに電話で知らせるべきだ。
 こっちはどしゃ降りの中を、庇づたいに駅まで行ったんだ。もちろん、ずぶぬれになった。アーケードのある街じゃないから、これは仕方ない。街を恨む気はない。
 ただ、こっちも夏風邪気味になってしまった。これは総合的に言って、他故の責任である。
 この怒りをいったいどこにぶつければいいのか。妻はもう仕事に出かけてしまっている。家の中は、俺ひとりだ。この時刻では、インタネに入っても誰もいまい。
 でも、いちおう入ってみる。俺って案外、寂しがりやなのかもしれない――モニタの光に照らされた俺の顔は、きっと苦虫をかみつぶしたような顔だったに違いない。

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*****楽光一さんが参加しました*****
楽光一>おはようございます。いや、もうこんにちわ、かな。
楽光一>さすがにだれもいませんか。
楽光一>誰かに聞いて欲しかったのですがね。
楽光一>ああ、話し相手が欲しい。
楽光一>ちょっと疲れました。
楽光一>個人攻撃になっちゃいそうだから、詳しくは言いませんが。
楽光一>人間を信じる、と言うのは大変ですね。
楽光一>いや、いいんですけどね。
*****ログ見のりょーさんが参加しました*****
楽光一>こっちが信じればいいのか。
楽光一>こんにちわ>りょーさん
楽光一>信じるものは救われるって言いますもんね。
楽光一>独り言、男らしくないですね。
楽光一>……
楽光一>帰ろう。
楽光一>*****今度はもっと楽しい書き込みをします*****

 パソコンに取り込んだ土曜日のオフ会の画像をサムネイルで見る。
 メガピクセルだから、十七インチモニタでも画像がみなはみ出してしまう。だから、サムネイル状態でぱらぱらと見ていくのがいい。気に入った画像があったら、サムネイルをクリックして大きく表示させればいいのだから。
 ひとつの画像の前で、眼が止まった。
 石原織香だ。
 クリックして、画像を大きくする。
 十七インチモニタ一杯に拡がる、少女の笑顔。
 確かに綺麗な子だな、と思う。
 長い漆黒の髪。
 ぱっちりと開いた眼、綺麗な瞳。
 細く長い首。
 すこし尖った顎。
 小さくて可愛らしい口。
 控え目なピアスが似合う耳。
 すこし紅潮した頬……。
 その時、ふと思った。
 自分が他故の立場だったらどうだろうか?
 集会で、知らない綺麗な女の子がいた。
 ちょっと好みだ。
 となりで写真を撮っているのは、あろうことかわが友人ではないか。
 撮った写真を貰うことはできないだろうか。
 できれば、彼女のことも知りたい。
 あいつは彼女の写真を撮ったのだから、何か情報を持っているはずだ。
 よこせ。
 さあ早く情報を吐くんだ。
 情報だ。
 情報だ!
「しゃべるもんか!」
 どんな手段を講じてもしゃべらせる!
 ……パソコンの前で眠ってしまったようだ。
 すこし熱があるような気がする。
 布団に入って横になろう。
 他故の野郎め。
 ちょっと憂鬱な気分だったが、本格的に寝てしまう前にメールチェックだけでもしておこう、と思い立った。どうせこの時刻には何もないだろうけど、一応ね……心の中でそう言い訳しながら、俺の身体は早くも布団を敷こうとしていた。
 ポストペットを起動し、インタネに繋ぐ。メールサーバーを読み込んでいます……メールが一通あります……きろりーん。
 おや、今の音は、ペットが来ている音だ――布団を敷いていた俺は、あわててモニタの前に駆け戻った。
 画面には、白いミニウサギが跳ねていた。ウサギは元気一杯にたっくの部屋を跳ね回ると、さっさと出て行ってしまった。
 咄嗟に受信簿を開く。
 メールの送り主は……orika-i@arsion.ne.jp……。
 石原織香からだ!

 

第6章 1998.07.22 20:10

 

 たっくが帰ってきた。
 調子を見てみると、どうやらお腹が減っているようだ。
 俺は〈おやつ〉をあげることにした。
 〈おやつ一覧〉ウインドウを開ける。中には、数日前に【ポストペットパーク】からダウンロードした、あたらしい〈おやつ〉が入っていた。俺はその中から、佐藤錦を選んでたっくに与える。たっくはすぐに起き上がり、部屋の中央に設置されているテーブルまでふにふにと歩いて行って、佐藤錦を食べた。佐藤錦は「水物」らしく、じるぅというすすり上げる音を立てて食べている。
 それから、すこし洗ってやることにした。
 俺は〈洗う〉コマンドを選択する。たっくは瞬時に姿を消し、次の瞬間には部屋の右隅にある風呂の中でじゃぶじゃぶと洗われていた。ペットによっては洗われるのを嫌うものもあるというが、うちのたっくは洗われるのが好きなようだ。陶酔した表情で洗われ、洗い終わると自分で飛び跳ねて水滴を切る。そして、またふにふにと部屋の中を歩き始めるのだ。
 ポストペットというメールソフトの最大の特徴は、この「ペットを育てる」という行為だろう。お腹がすいたら〈おやつ〉をあげる、汚くなったら洗ってあげる、粗相をしたら叱ってあげる、そしてたまには撫でてあげる。ペットはメールを持って出かけることによって経験値を上げていくが、メンタルなケアは飼い主の仕事だ。たまに、他故のところに行ったうちのたっくのように、相手に撲られてしまうことだってあるのだ。ショックを受けた彼女をなぐさめるのも、父親としては当然の仕事だ。
「……父親としては、か……」
 デスクトップに置いてある、PHOTOと記されたアイコンをクリックする。画像処理ソフトであるPixelCatが起動し、ちいさな写真が表示される。
 入院中の圭子の写真だ。
 まだ当時、出たてのデジタルカメラ――QuickTake100で撮られたその画像は、ピクセルも荒く、お世辞にも優れた画像だとは言い難かった。写真の中で、不安そうにしている圭子の表情も、よく見なければ判らないほどだ。
 しかし、これしか手元に写真はないのだ。しかも、具合のいいことに、この写真は決して色あせないし、必要があったらこうしていつでもマウスのダブルクリックひとつで見られる。
 ここに写真があることを、圭子は知らない。圭子にとっては、けっして思い出したくないことだろうから、俺も何も言わない。
 しかし、なぜか月に一度ほどは、この写真を見てしまう。
 この写真に縛られているのは、俺の方だ。
 眼を逸らす。無意識のうちに、手は終了コマンドを押していた。
 そして、たっくが持ち帰った〈ひみつ日記〉を読む。
 この〈ひみつ日記〉という機能は、ポストペットがメールソフトであるが故の、最高のお楽しみ機能である。ペットがメールを相手に持っていき、その配達を終えた段階で、彼らは飼い主に向けてその日の配達先の感想文を書いて持ってくるのだ。そこにはペットの感情が描写されており、思わず頬が緩む。
 石原織香のところに行ったたっくの〈ひみつ日記〉には、こう書かれていた。


7月22にち
今日ママのところへいった。
レジーとあそんだ。
死ぬほどなでられた。
そうそう、そんな感じ。
----------
たっく


 どうやら石原織香は、初期設定の段階で、自分の名前を入れ忘れたようだ。飼い主の名前が初期値のまま「ママ」になっている。
 続いて、〈宝箱〉をチェックする。たっくがお宝を拾ってきたかもしれないからだ。
 ……新しいお宝があった。
 〈サッドマック〉だ。
 Windowsユーザーは見たことがない、Macユーザーは見たくないという「破滅のアイコン」である。マシン起動時にこれが出たら、そのマシンは完全にアウトである。少なくとも、ハードディスクの再フォーマットとOSの入れ換えが必要になる。
 たっくも凄いものを拾ってくるなぁ……と思いつつ、俺は〈宝箱〉の蓋を閉じた。
 たっくは机の前に座り込んでいる。いわゆる「だらだらしています」という状態だ。いつも元気に歩き回っているとは限らない。
 ふと気になって、背後を見る。
 開かれたふすまの向こう側では、圭子が机に突っ伏している。疲れが相当出ているようだった。
 本当は今夜のうちに話しておきたかったのだが……俺は振り返り、ふたたびモニタに向かう。
 たっくはまだだらだらしていた。

http://www.novelworld.ne.jp/~minakawa/chatroom/yukachat.cgi

*****楽光一さんが参加しました*****
楽光一>こんぱんわ>ALL
くら(仕事中)>こんばんわ>楽さん
楽光一>あれ、くらさんだけですか。
くら(仕事中)>みんな今日はまだみたいですよ
くら(仕事中)>わたしもすぐに落ちます
楽光一>他故は来てませんか。
くら(仕事中)>さあ。掲示板見る限りじゃ、風邪引いてどうのこうのって
くら(仕事中)>あ、ごめんなさい。また来ますね
楽光一>さようなら>くらさん
*****くつみさんが参加しました*****
くつみ>こんばんわー
くら(仕事中)>さよなら
楽光一>こんばんわ>くつみさん
くつみ>あ、さようなら。擦れ違いですね>くらさん
くら(仕事中)>***また来ます***
楽光一>くつみさんとこのくまたんは元気? こないだの凄いメールはびっくりしたけど(笑)
くつみ>そういえばここんところ、楽さんのところには行かせてませんね。あのときは失礼しました。
楽光一>いきなりタイトルが「たずねびと」だもんね。くまたんがあんなメールを書いてくるとは思わなかったし。
くつみ>かわいがりすぎたんでしょうかね。幸福度はいつも「おひさまのよう」だったんだけどなぁ。
楽光一>ペットが自主的にメールを出すっていう機能があることは知ってたけど、まさかあんな形で来るとはね。「ママをさがしています。えなちゃんはどうやら違うと気づきました」って言われてもねぇ。
くつみ>あたしがママよぉ。何が不満なんだ〜(苦笑)
楽光一>うちのたっくもそんなことをする可能性があるのかなぁ。うちも過保護じゃいかんな。もっときっちり躾けないと(笑)
*****たかさんが参加しました*****
たか>こんばんわ〜
くつみ>躾ですか。厳しいですね。
楽光一>こんばんわ>たかさん
くつみ>こんばんわー、たかさん
楽光一>あ、ごめんなさい。ちょっと野暮用ができました。今日はこの辺で失礼しますね>ALL
たか>くつみさん、そろそろ「ぴかひか」の打ち合わせを……
くつみ>あ、そうそう。言わなきゃいけなかったことがあったんだ>たかさん
楽光一>*****それでは*****
たか>あ、楽さん、さようなら
くつみ>さよならー、楽さん
*****他故隊長(だるだる)が参加しました*****
他故隊長(だるだる)>ちょっとだけよ>ALL
楽光一>*****他故、あとでメールする*****
たか>こんばんわ、たいちょー
たか>何? くつみさん
くつみ>他故さん、こんばんわ。大丈夫ですか?
他故隊長(だるだる)>もうだるだるです。
他故隊長(だるだる)>あんだって?>楽
楽光一>*****一晩待ってくれ>他故*****
他故隊長(だるだる)>夏風邪は待ってくれないですね。酷いもんです。
他故隊長(だるだる)>……期待しないで待ってるよ<メール>楽
楽光一>*****それでは本当にさようなら*****


 もぞもぞと起き出した妻のことを気にしながら、俺はモデムの切れる音を確認した。

 

第7章 1998.07.23 19:23

 

「何、けっきょく、あなたの考えていたことはみーんな杞憂だったわけ?」
 圭子は威勢よく蕎麦をすすりながら、俺の方を向いて言った。すすりながら喋るんじゃない――と言おうとした俺の口の中にも、蕎麦がすすり込まれていた。
 池袋東武に隣接するレストラン街、メトロポリタンプラザの七階。俺の舌に最も合う蕎麦屋〈小松庵〉に俺たちふたりは、いた。
「杞憂と言うか何と言うか……こんなに面白い展開になるとは思っても見なかったよね、とにかく」
 せいろ二枚を平らげ、俺はゆっくりと蕎麦湯を飲み、一息ついていた。圭子は鴨南蛮の熱いやつをふうふう吹きながら食べている。
「意外だったのは、彼女がちゃんと二十数名の人間を把握して、その上で俺と話をしていたってことだね」
 圭子が上目使いに俺を見る。蕎麦が口から十数本垂れている。何か言いたげだったが、その状態ではさすがに何も言えないようだ。
「メールを読んだんだよ……空間把握というか、人間の把握が完璧だったよ。さすがに名前までは判らなかったみたいだけど、入口から数えて奥へ何番目の人、とか、よくそこまで覚えているものだと感心した」
 蕎麦がしゅるりと口腔に消えていく。すこしだけ曇った丸めがねの奥の眼が続きを即しているような気がしたので、俺は切った話をさらに続けた。
「俺だって、知らないひとのことは覚えてないよ。あの二十数名の中の、少なくとも七〜八人は全然知らない人だったし、五人ばかりは二度目くらいのひとだったから、ハンドルもあやふやだ」
 蕎麦湯を飲む。蕎麦つゆに山葵を溶かして食べる人をよく見かけるが、そういう人は蕎麦湯を飲まないのだろうか。それとも、蕎麦湯を飲むために、改めて湯のみを貰ったりするのだろうか。少なくとも、俺は蕎麦つゆに山葵は入れない。山葵は箸の先でつまんで、蕎麦と一緒に食べるものだ。そうでなければ、山葵の香りを楽しむことができないではないか。山葵は香りなのである。辛さを求めてはいけない。
「そんな中で、俺を中心にした人間関係をほぼ完璧に構築できたんだから、あの子は鋭いよね。二次会の飲み会のときにはぜんぜん話なんかしなかったんだから、その時に他の人からの情報もかなり入手したんだろうけどね」
 圭子は蕎麦をすすり終え、つゆの中に残っている鴨をいとおしげに見つめている。彼女は、好きなものは徹底して最後に食べる人だ。
「だから、あのメールに驚いたんだ。いや、俺はオフ会用の名刺を渡して、俺のメルアドに、お前あてのメールを出してくれって言ったんだよ。懐かしいだろうし、ここんところ忙しかったお前に昔話のできる人がひとりくらいいてもいいかなって思ったからさ」
 聞いているのかいないのか、圭子は鴨を口にして陶酔の表情を浮かべている。会社の付き合いとやらで何を食べてきているのかは知らないが、鴨ひときれでこんな倖せな表情を浮かべる女はそうはいまい。それとも、ここの鴨は彼女のそういった外食経験から鑑みても、旨い鴨なのか?
「そしたら何てことはない。『カラオケボックスで、入口からいちばん近い丸椅子に座っていた、声の大きい髭のひとが隊長さんですか?』と来たもんだ」
 鴨を食べ終えた圭子は、箸を揃えて置き、「ごちそうさま」の合掌をしていた。汁は飲まない。
「二次会ではあいつ、幹事だったから、ぜんぜん宴席にもいなかったし、回りの人間ともそんなに話せなかったんだよな。ただ彼女は、二次会のときにやつがデルフィン徳原と話していたプロレス談義……特に女子プロレス談義を聞きつけていたんだそうな」
 俺は一息ついて、猪口にわずかに蕎麦つゆを足し、蕎麦湯を注ぎ込んだ。白いどろりとした蕎麦湯が、僅かに茶色を帯びてくる。
「で、『隊長さんと女子プロレスの話がしてみたいんです。私、団体で言えばアルシオンが好きなんです』と来たもんだ。こんな都合のいい話があるもんか」
「で、どうしたの?」
 圭子がお茶をすすりながら言う。だから、すすりながら言うんじゃないって。
「だから今朝、他故と彼女の両方にメールを打っておいた。彼女の方にたっくを遣って、他故はポストマンでな……正確には、彼女には二度、たっくを遣ってることになるな」
 ポストマンというのは、ポストペットにおけるノーマルメール配達専門のキャラクタのことだ。
 ポストペットはその機能上、ペットでメールを送ってしまうと、相手が受け取るまで自分のペットは出かけたまま――不在の状態になる。不在だからと言ってメールが送れないのではメールソフトとしてあまりに不便なので、ノーマルのメールソフトと同様にメールを配信できるような機能があるのだ。
 金属でできたロボットの形をしたポストマンと呼ばれるキャラクタがそれだ。このキャラクタは、ペットのように相手のポストペット上に現れるわけではないが、メールを配信すると、ポストからメールを持って画面の外へローラーブレードでダッシュしていく。
 ポストペットはあくまで「ポストペットを持っている同士がペットをやり取りするから楽しい」のであって、他のメールソフトやポストマンで配信されたメールはただのメールだから、ペットが入り込んで何かする、といった楽しみは全くない。
 そういう意味では、ポストペットを使っている相手にポストマンでメールを送るというのは、どちらかと言えば味気ないメール、ということになる。
「依怙地だったのは俺の方だったんだね。焦っているのも、俺だった」
 ふふっ、と圭子が笑った。どんな意味の笑いだったのか――細い眼を、さらに細めている。
「焦っているついでに、いいこと教えてあげるわ。もうあたしに隠れて、あんな昔の写真見なくてもいいような」
「……知っていたのか」
「知らないと思ってたの? ずいぶん鈍くなっちゃったのねぇ」
 もう一度、圭子は笑った。今度は声を立てない、満面の笑みというやつだ。
「あたしも自分のノートパソコンにポスぺを入れようと思ってるのよ……会社のメルアドがあるから。そしたら、亀さんがいいなぁ」
 夢見るような眼で、目の前のちいさな女が呟く。
「……名前はふたりで決めましょうね。今度はふたりで……」
 鈍い俺には、彼女が何を言いたいのかが全く判らない。
「……本当に鈍くなったのね、ミスター・ポストマン」
 それでも圭子は笑っていた。笑顔の底に、輝く別の笑顔が見えていた。


「たっくの大冒険」Ver.1.0
Project T.A.C./Power T.A.C. Accelerator
1998.8.13 20:59

 

作:楽光一(Project T.A.C.)

初出:同人誌『たっくの大冒険』

執筆時期:1998年08月

テキスト容量:29855byte

物理的行数:642行

原稿文字数:15057文字

 

【あとがき】

 この小説には、筆者の友人たちが参加してくれています。他故はもとより、チャット場面で出てくるハンドルは、すべて実在の友人たちです。なんでこんな風変わりな小説を書こうと思ったのか今となってははっきり思い出せませんが、たぶん筆者は「自分の登場する私小説風の小説を書きたかった」んじゃないかなあ、と。敬愛する尾辻克彦を目指していたふしも伺えます。

 登場人物の性格は総てフィクションです。圭子は筆者の妻がモデルではありません(笑)。ここにも『蕎麦喰うひとも好き好き』に続いて小松庵が出てきますね。実際に妻と行ったことは一度しかないのですが(笑)。

 あと、この同人誌をまんが大会で購われた方、そして売り切れになってから予約としてメールアドレスを教えてくれた方、お詫びします。あなた方が期待していた「ポストペット本」じゃなくてすみませんでした。オンライン版アップの暁には……なんて同人版のあとがきに書いていますが、ちょっと時期がずれちゃいましたね(苦笑)。

 

楽光一(たのし・こういち/Project T.A.C.)

2002年09月08日あとがき記す

 

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Written by 楽光一/Project T.A.C.

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