マッキントッシュ パワーブック5300cs
アップルコンピュータ/オープンプライス
by他故壁氏
ようやくマッキントッシュのポータブルタイプ(恐ろしくてノートタイプなどとは口が裂けても言えない)であるパワーブックシリーズに、パワーPCをエンジンとしたタイプが出てきたので、ここでレヴューを行いたい。
その前にマッキントッシュ(以下「マック」と略す)というコンピュータについて、少しだけ説明しておく必要があろう。
マックはアメリカのコンピュータである。メーカーはアップル社といって、経営見通しの不順な会社である(笑)。今、巷を賑わしている(らしい)「ウインドウズ」なるものとは別物のコンピュータ、という取り方をしていただきたい。
マックはそれまでの(少し詳しく言えば「ウインドウズ以前の」)パーソナルコンピュータとは違い、絵文字(「アイコン」)と絵文字を選択する掌大の機械(「マウス」)でコンピュータを操作できるため、呪文めいた文字をキーボードから入力しなくて済むというところから、「先進のパーソナルコンピュータ」とされてきた。
もちろん、シェアやその他の問題から価格はバカ高だったし、つい5年前くらい前までは日本語もろくに話せないような莫迦マシンだったのだが、技術の進歩と費用対効果により革新的に高性能化・低価格化し、いつのまにやら「医者や絵かきの道楽マシン」から「ファミリーで使える親切パソコン」への変貌を遂げていった。
それがいいか悪いかは後の歴史が判断してくれるであろうが(笑)、とにかくマックは現在、ウインドウズマシンと並ぶ「第二のパソコン選択肢」にまで上り詰めたのである。
日本語もまともに話せるようになった。遅い遅いと言われていた処理速度も、2年前にパワーPCと呼ばれる新しい心臓部を得ることによって飛躍的に向上し、ライバルであるペンティアム・プロセッサ搭載パソコンとの性能差もなくなった。
あとは、シェアとの闘いだけ――ま、こればっかりは絶望的だが。
で、マックのポータブルタイプのことを「パワーブック」と言うのだが、そのパワーPCプロセッサを使って「飛躍的に」性能の良くなった新シリーズが、ようやく昨年10月に登場したのである。
小生のゲットした機種は、カラーFSTN液晶ディスプレィを装備し、低価格でありながら256色カラーの使えるマシンである5300cs。4機種ある5300シリーズの中で、もっともコストパフォーマンスに優れた機種である。
サイズはいわゆるA4ファイルサイズ、重量は公称2.8キログラム。実際には2キロを超えるとモノはなんでも重く感じる。
ディスプレィはSTN方式にしてはよく見える。斜めからの視認性も思ったよりはいい。よく液晶テレビなどで、正面からすこしずれた横から見ると急に暗くなって画像が見えなくなる機種があるが、あれがSTN方式の液晶である。逆に、どの方向からでもくっきり見えるのがTFT方式の液晶で、当然発色や光量はTFTのほうがいいのだが、なにせこっちは高い。TFT液晶を装備した5300cは実勢価格で45万円ほどする。ちなみにFSTN液晶の5300csは26万円ほどだ。
肝心の処理速度の方だが、これが困ったことに、大して速いとは思えないのだ。びゅんびゅん、という感じではない。少なくとも、パワーマッキントッシュ(パワーPCプロセッサを搭載したデスクトップタイプのマック)を使ったことのある人間からは、こいつがデスクトップと互角以上の能力を持つマシンだとはとうてい思えないのだ。
確かに液晶の描画速度やソフトの展開速度は予想以上に速い。ワープロの入力レスポンスもいい。だが、何かがひっかかる。どうもおかしい。プロセッサ本来の速度が出ていない、活かされていないような気がしてならないのだ。
ハードディスクは750MB。容量は文句なしだが、どうもアクセススピード(データの読み出し/書き込みの速度)が遅いようだ。これがボトルネックになって、このマシンのスピードを全体的に落としているような気がする。
バッテリが「発火事件」によってリチウムイオンからニッケル水素に換ってしまったとか(さらにソニーのリチウムイオン電池工場が火事で焼け落ちてしまったとか)、アクセサリの発売が遅いとか、色々問題の多いマシンでもあるが、二台目のマックとしては手ごろでいいのではないか、と思う。ただ、決してファーストマシンとしてはお勧めできない。CD−ROMドライヴもないしね。
さあ、次回は5300csとPCカードモデムを使ったモウバルコンピューティング顛末記だっ! でも、未だにPCカードモデムからダイネットに入れないぞ!(笑)何でやねん!
PS:村井康彦氏は「中国の人名も表記できるワープロはないものだろうか?」と言われていたが、マックは世界各国の言葉に対応しており、いわゆる中国語のフォント(印字および画面表示用の文字)もある。使用するためには「チャイニーズ・ランゲージ・キット」が必要になるが、これなら中国漢字のほとんどが表記可能なはずである(中国の2バイトコード表に載っている漢字なら……だが。中国には、日本のJISに相当する組織はあるのだろうか?)。
1996.01.27
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