一週間限定で公開していた『パンドラ・リターンズ』(1)と(2)の間を埋めるネタ(激しく妄想)
皆本は車の中で指示を出すとのことで残って、賢木と紫穂だけがパンドラの手がかりがあるという階へ向かうことになった。
エレベーターを待つ間、紫穂はしみじみと呟いた
「センセイと二人っきりで仕事だなんて、びっくり」
そうだな、と言いながらちらりと賢木は横を見る。紫穂が左手に持っているのはいつも愛用してる銃。右手には皆本から奪ったブラスター。それをみつめ一瞬眉をひそめる。
「紫穂、本当に大丈夫か?」
ん? と紫穂が視線を絡めてくる。
「大丈夫」
言葉にかぶるようにエレベーターの到着を告げる機械音がエントランスに鳴り響いた。
まさかの事態を想定し、銃を構える二人。しかし開いた箱の中には人の気配はなかった。ふっと緊張を解き、揃ってエレベーターに乗り込んだ。 目的の階のボタンを押したあと、賢木は壁に寄りかかり紫穂を見遣る。するとばっちりと目が合った。
彼女はニッコリと笑う。一瞬任務中だということを忘れるくらいの、愛らしい微笑み。
「さっきの返事だけど」
その笑顔のまますっと賢木の横に近づいてぎゅっと腕に絡んできた。
「私は大丈夫よ。だってこうしてセンセイと一緒に仕事をしているってことは、何かあったらセンセイが守ってくれるって信じてるからっ」
紫穂から流れ込んできた思考も全く同じことを告げていた。
自分に全幅の信頼を寄せている彼女が愛おしく、ぎゅっと腰を引き寄せ、軽く口づける。
「……ん、もう。こんな状況で何してるのよ」
唇が離れると紫穂がぷくり、と頬を膨らませた。ふふふ、と不敵な笑みを見せ、持っていたブラスターを突き付けてくる。
「紫穂さーん、それはさすがに怖いんですけど」
「こんな時にイチャイチャしたがるセンセイが悪いのよ」
「だって可愛かったからさ」
正直に想いを口にするとパッと顔が赤くなる目の前の彼女。
「……さっき皆本さんにしたみたいに耳に息吹き掛けるわよ」
「おう、いくらでもやってくれ。ただしこれが片付いたらな。──着くぞ」
急に顔を引き締め、身体中に緊張を走らせた賢木に、紫穂も神経を尖らせながら、心の中で呟く。
……ずるい。
いつもへらへらしてる時と仕事の時の違いが激しくて。
それがすごくカッコいい、だなんて。
何かあったときに自分を庇えるように、と肩に置かれた手の暖かさに、ホッとしながら銃を構えた。
と同時に、エレベーターが目的階に着いたのを電光表示が告げる。
「……行くぞ」
「うんっ!」
そして二人はエレベーターから飛び出した。
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